2024 05,19 12:42 |
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2008 04,14 15:52 |
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突然ですがパラレル設定ロイエド。
ただし保証はしない。 苦情も受け付けん。 脱腸覚悟の方のみ下を開きたまへ。 野に咲く花々
秘境に潜む獣達
荒れた大地にも
青く広がる大海原にも
香りの記憶は存在する
目に映し取る事の出来ない香りの記憶の糸を紡ぎ
一瞬のうちに変化してしまう香りの儚さを
研ぎ澄まされた感性を用いて
香水という形ある物に創り上げる能力を持ちし者
それが『調香師』である
「とういう事で、私達調香師は特別な嗅覚を持っているだけではないのです」
「まぁ……」
皺が刻まれ始めた掌を隠すために嵌めたレースの手袋に包まれた手に、男の艶やかな唇が押し当てられ、婦人は往来の場であることも忘れて瞳を潤ませた。
分厚く塗られ、今にもひび割れしそうな化粧。
ごてごてと飾り立てられたドレス
くすんだ金髪を隠すように大振りに作られた髪飾り。
石の大きさばかりが強調された、イヤリングやネックレスや指輪。
個々に見る分にはそれほど煩く感じないだろうに、こうも集合体で見せられると些かうっと惜しいなと内心で毒づきながら、黒髪の青年は強固な笑顔の仮面を貼り付け、新しいカモを捕らえんと、女性が好みそうな言葉の羅列を低めの甘やかな声に乗せて綴る。
黒髪に漆黒の瞳。しなやかな四肢と何処となくオリエンタルな雰囲気を纏わせる青年に、御婦人はただただ魅入られる。
「貴女のような気品溢れる御方では、世間に溢れかえる香水では却って色褪せてしまうのではありませんか?」
「え、ええ…そうね。そこいらの物ではどうしても私には合わなくて」
青年の眼差しに当てられ頬を染めるその身体からは、思わず鼻を背けたくなるほど薔薇の強い香りがする。
おそらく最近巷で流行している物を適当に買い求め、程度も判らず身体中にふり掛けたのであろう。仮にも伯爵夫人を語るのならばもう少し香水の知識を得ていても良いと思うのだが、所詮金で買った成金の果ての地位に過ぎないからなのか、拘り具合が中途半端だなと青年は裏で小さく笑った。
そんな裏の声など欠片も見せず、青年はなおも続ける。
「そんな美しい方のみが持つ贅沢な悩みも、調香師の手にかかれば貴女にもっとも相応しい香水を瞬時にイメージし、創り上げる事が可能なのです」
「まぁ…そうですの?」
「ええ……それも貴女専用の、世界で唯一の香水を」
「まぁ…っ」
自分専用、世界で唯一つ……これらの単語に女性、特に爵位のある御婦人方はとても弱い。
勿論創るというからには、その女性に合う香水を創り上げるのが調香師の仕事であり役目だが、それが気品溢れる物になるかそうでないのかは、香水以前にその人物に懸かっている。
香水はあくまで嗜み。それを生かすも殺すも、付けた者自身にかかっている。
だがそんなことにも気付かず、目前の成金伯爵夫人は言葉に乗せられ、二つ返事で青年の言葉に頷いた。
御新規様一名ありがとうございますと、ロイは脳内顧客リストに新たな名前を書き込む。
この類の御婦人は一度気に入られれば、こちらからセールスせずとも勝手に注文を重ねてくれる。一番扱い易い客だ。
「では近いうちに必ずご連絡致します。貴女様にピッタリの香水をお届けしますよ」
「ええ、楽しみにしておりますわマスタング様」
水鳥の羽に縁取られた扇で口元を隠しつつ、それでも隠しきれない欲望の眼差しを纏わせながら馬車へと乗り込むご婦人に、黒髪の青年――――調香師ロイ・マスタングは最後まで底の見えぬ微笑の仮面を貼り付けていた。
「相っ変わらずだな、調香師」
馬車が路地の向こうに消え、ようやく新鮮な空気を吸えると肩の荷を降ろしたと同時に声を掛けられ、ロイはビクリと肩を強張らせたが、その聞き覚えのある声音に肩の力を再び抜いた。
「これはこれはエルリック伯爵、今日も変わらず麗しい」
先ほどまで伯爵夫人に向けていた仮面の微笑とは似ても似つかぬ、普通のご婦人であれば一瞬で蕩けてしまうだろう、心からの微笑を惜しげも無く振り向き様に向けるロイに、背後に佇んでいた伯爵と呼ばれた金髪の少年は微塵も気にした風も無く、むしろ呆れた表情をして一刀両断した。
「お前の常套句は聞き飽きた。誑しもその辺にしとかねぇと、いつか背後から刺されるぜ」
「相変わらず手厳しい」
「俺は一般論を言ったまでだ。で?また顧客集めに精を出してたのか?」
路地の向こうに消えた馬車を追うように視線を上げる少年に、ロイは苦笑を零す。
「おや、見ていたのかい?」
「正確には偶然見かけた、だな」
この先にある古書店に寄った帰りだと告げる少年の手には、確かに包装もされぬままの古びた分厚い書物が抱えられていた。
「……また屋敷を抜け出してきたのか」
「頼んでた本が届いたって連絡があったからさ。散歩ついでにちょっと、な」
悪びれも無く笑う若き伯爵の表情に、ロイは深々と溜息を零す。
エドワード・H・エルリック伯爵。
先代が早くに亡くなり、数ある親戚の者達を押し退けて、若干十二歳にして爵位の称号を得た若き伯爵。
眩いまでの金の髪と瞳を持つその伯爵はかなりの変わり者で、大凡一般的な貴族の枠からは大きく外れた思考を持っていた。
その一つが、この『屋敷からの脱走』である。
貴族の凝り固まった生活を嫌い、こうして自由気ままに屋敷を抜け出しては街に出てきて、ある時は下町の子供達と遊び、ある時は小売店で買い食いをしたり、古書店巡りを楽しんでいるのだ。
ロイとの出会いもそんな脱走の最中の時で、こんな破天荒な貴族も居るのかと正直度肝を抜かれた。
だが不思議と嫌悪は感じなかった。
いや、嫌悪どころか……知り合って早々、事もあろうにこの青年は一回りも離れた少年に、
『この出会いは間違いなく必然だ。私とこのまま運命を共にしてくれないだろうか』
と、歯の浮くような求婚の台詞を躊躇いも無く口にしたのだ。
勿論伯爵はその告白を瞬殺。フザケンナの一言で切り捨てたのだが、面の皮が分厚く諦めの悪い男はその程度の拒絶では諦めなかった。
顔を合わせる度に毎度毎度異なる告白を浴びせ掛け、口八丁手八丁、伊達に誑しと謂われてませんとばかりに日々アプローチをし続けているのだが、相手である伯爵も一筋縄では行かない上に、まだ情緒も確定していない、青春もまだまだ始まったばかりの十六歳。
大の大人の真剣な告白すら『冗談も程ほどにしとけ』の一言で済ませ、一度とて真面目に取ろうとはしなかった。
「それで、少しは焼いてくれたのかな?」
「寝言は寝て言え。俺はお前のおふざけに構っていられるほど暇じゃない」
御婦人のお相手はあくまでビジネスに過ぎないのだが、君に焼かれるのならば悪くないと零す男の言葉を、エドワードはピシャリと切り捨てる。
「私は君に関してはいつでも真剣なのだがね」
「あ~ハイハイ。そうでしたね真剣にフザケているんでしたね調香師殿は」
「ハァ、……いつになったら私の言葉は君の心に届くのだろうね」
「安心しな、永遠に無いから」
「つれないな……だがそんな君も愛しい」
「っ、さむっ本気で鳥肌立った……っ」
「それはいけない、私の肌で隅々まで温めて……」
腰に伸ばされた手をエドワードは容赦無く叩き落し、数歩後退った。
「触るな変態っ!そんな暇があったらとっとと仕事にでも戻りやがれ!!」
「…失礼な。私は単に君に胸の内を素直に告げているだけなのに」
「男の俺にアイ云々ほざいてる時点で立派な変態だっいい加減自覚しろエロ調香師!!」
「フム。何度も言うが、私には幼児趣味も無ければ同性愛者でも無い。単に君という魂に惹かれただけなのだが」
その証拠に気味以外の同性など視界にも入らん。
「だ~か~ら~、それが変態の第一歩なんだろがっ!そろそろ本気で自覚しろ!!」
つづ・・・・・きません(笑) ここまでしか書いてなかった! 続き希望があったら書くかもね。 PR |
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